My style時代の節目

2008年08月03日

リクルーティング: 誠実さ

先日リクルーティングに携わる過程でこんなことがあった

学生Aは以前うちの会社のリクルーティングイベントでパフォーマンスは”それなり”だったが人懐っこい性格と愛想の良さ、そして何よりうちの会社に入りたいという強い熱意が決め手になり、実際の新卒採用時では真剣にオファー(内定)を検討するという立場だった
その後開催されたサマーインターン選考時には彼の個人的な事情から応募が遅れてしまったのだが、「どうしても入社したいので遅ればせながらプロセスに加えてほしい」とこれまた熱意ある訴えが認められ、原則応募が遅れた人の参加は認められないが、極めて例外的な取り扱いとしてプロセスに加わった
ところが選考が進んだある時、「C社から先にインターンの内定をもらったので今回のインターン選考は辞退させて欲しい」とメールが一本きた
また、「実際の採用選考時にはまた応募するのでその時は宜しくお願いします」と。
彼は本当に”愛想のいい”人間だった

学生Bは一昨年前の採用プロセスで、A同様現時点での実力というより入社への熱意が認められ成長のポテンシャルに賭けるというたてつけでうちの会社からオファーを得た
ところがオファーを通知した1日後に「D社から内定が出たので辞退したい」と満面の笑みで連絡をしにきた(恐らくD社から内定を得た直後で嬉しかったのだと思う)
D社のリクルーティングを担当している友人に話を聞いてみると話はこうだった「オファーを出すかどうか際どい学生だったけど、E社(うちの会社)からの内定を持ってきて「オファーをもらえないならE社に行く。今オファーをもらえるならD社に行く」と交渉しに来たんだよね。彼女のパフォーマンスには正直一部疑問が残っていたものの、E社から内定がでるくらいであればやはり実力を備えているのだろうと思ってオファーを出したんだよ」
彼はうちのオファーを交渉材料にしてD社のオファーを得たのだった

オファーを検討する際には、その学生に明確な実力がありその後の成長も十分期待できる場合と、その時点では実力が証明されていない或いは明らかに足りていないものの入社後の著しい成長が期待される場合がある
AもBも明らかに後者だったのだが、彼らは創り上げた熱意を実力にのせて自分の評価をかさ上げしていた
AもBも、彼らの行動は学生としてみたら当然なのかもしれない。内定を得なければ何も始まらないし、内定を得るためだったら”嘘も方便”、できることは全てする、と

仕事を始めて分かったことが二つ
金融という仕事の”汚さ”と、正反対にビジネスの大部分は”信頼”で支えられているということだ
扱う商品が”お金”そのものなので人間の欲望がむき出しになりぶつかり合う汚さはある程度予想したとおりだった
だけど僕らの仕事の大きな部分が信頼で支えられていると分かったのは新鮮だった
チーム内、会社内にとどまらず、競争する他社とでさえも根底には信頼が無ければ仕事は成立しない
他者を騙すことで短期の利益を上げることは容易だが、業界に長くいる人はほぼ例外なく社内外から信頼を得ている人間だった

学生A、Bは自分のことを世渡りが上手いと思っているのかもしれないし、就職活動に関しては上手くやったと感じているかもしれない
だが彼らには最も大切な”誠実さ”が無い
その場を取り繕う張子の虎だ
僕も僕の同僚も彼らの顔と名前を忘れないし、将来交わることがあったとしても一緒に仕事をすることはないだろう
信頼できない人間に自分の背中を任せることほど危険なことはないのだから

nao_hiko_ at 16:00│Comments(1)TrackBack(0)

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この記事へのコメント

1. Posted by barack   2009年01月05日 03:53
ご無沙汰しております。
ちょうど一年前のジョブでお世話になったbarackです。
お元気ですか?
遅ればせながらご昇進おめでとうございます。
nao_hikoさんがジョブハンティング中の私に「3年後の自分へ」の考え方や金融についての価値観についてお話して下さり感動した事を覚えています。
その節はありがとうございました。
私も4月からは金融の世界に入る予定です。nao_hikoさんのようなバンカーになれるよう頑張ります。
ますますのご活躍をお祈り申し上げます。

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